商品案内<個人のお客様>
chapter01|「職人が納得する、障子紙を探しているんだよ」
 はじまりはお客様からの一本の電話だった。
「今、御社から購入している障子紙の件なのですが、職人があれじゃダメだって言っていて。代わりの商品はありませんかね?」話を聞いてみると、紙は高評価だが、現場での使い勝手に問題があるとのこと。私たちはすぐにお客様の元に向かい、現場で詳しく話を聞くことにした。
「まず両面テープ貼りって難しいよな。糊貼りに慣れているからさ。霧吹きが出来ないもの問題だよね。あれで仕上がりも変わってくるし。とにかく、施工が難しいのよ」。
お客様から告げられた不満点に私たちは驚いた。より簡単に、かつ現在主流になりつつある強度のある紙なのに。
より手軽に、より簡単にと簡略化した部分がプロの目から見ると大きな不満になっていたとは。
 さらに話を進めると、今回の件で試作品の提出までに許された期間はおよそ1週間。決して余裕のあるスケジュールではない。品質とスピードと、両方が問われる案件となった。
chapter02|プロを納得させる紙作りに、難問続出。
 社に戻った私たちは、早速商品の改良にとりかかった。
まず行ったことは、情報収集。現在販売している商品、過去に販売した商品の見本、他社の商品を集め、比較・検討を行った。強度のある紙は過去に何度も作ったことがある。しかしながら、それらのものは決して破れないものではなく、あくまで破れにくいもの。今回は、破れない障子紙を作らなければならない。それらのことを頭の隅に置きつつ試行錯誤が続いた。ある程度の方針が決まり、試作品の製作を始めよう…そう考えていた私たちに、数多くの商品開発に関わった品質管理室員から思わぬ反応が返ってきた。「これじゃ、駄目だよ」。
 さらに言葉は続いた、「以前、挑戦した事があるが、強度を上げようとするとどうしても糊との相性が悪くなる。和紙の風合いも損ねる。両立させるのはまず不可能だよ」。
問題はそれだけではなかった。霧吹きである。本来、紙のたわみを修正するために行われる霧吹きだが、水分を含みやすいように作るとどうしても強度が落ちてしまう。《糊で貼れること、強度があること、霧吹きが出来ること》この3つを同時に成立させることは想像以上に難しい事だった。
chapter03|紙鍋の技術が問題解決の大きなヒントに。
 なかなか思い通りの紙には仕上がらず、少し焦りの色が見えはじめた頃、問題の商品を手に取り、この商品が出来た経緯を振り返る事にした。
『強度を出す』ことに主眼を起き開発された商品。もとは、旅館などで使われる紙鍋の技術を応用した障子紙であった。和紙の風合いを生かしつつ、且つ強度と耐水性をもった紙鍋。これを基に作られたのが「フィルムの間に和紙を挟んだ」障子紙であった。「和の風合い、紙の地合いを損ねること無い為、見た目は和紙そのもの」しかしながら現代の様式にアレンジされた障子紙こそがこの紙であった。
 今回も和紙の風合いは損ねることは無く、かつ強度も必要である。当然ながら要望された通り糊で貼れる紙でなければならない。誰も考えつかない発想、それを実現させる技術こそが弊社の強み。
「まだまだ改良の余地はありそうだ、とにかくやってみよう。」
早速、原材料や製品の見直し、技術的な問題点などを1つ1つ解決しながら試作品を作り続けた。
満足のいく紙が仕上がったのは、ちょうど約束をして1週間後、その日だった。
chapter04|職人の不満を完全解決した唯一無二の商品に。
 商品を納入後、私たちはお客様からの連絡を待った。強度は足りていたのだろうか、使い勝手はどうだろうか、糊との相性はどうだろうか。もちろん何度もテストを繰り返し、自信を持って送り出した商品だ。まず問題は無いと思っていた。しかしながら、職人の世界は感覚がすべて。しかもその感覚は恐ろしく繊細なものだ。もしこれで駄目だと言われたら…。心のどこかに不安を抱えていたのは間違いない。
 数日後、待ちに待った電話がかかってきた。「今度の障子紙は素晴らしいですね。職人さんも満足しているようです」。聞けば、強度、使い勝手、仕上がりともに納得の仕上がりとのこと。
「やはりプロが使う紙は、プロに作ってもらわないと。」という最高の褒め言葉を頂きホッとすると同時に最高の満足感を覚えながら受話器を置いた。